矯正豆知識

親知らずについて

永久歯は全部で28本はえますが、さらに上下左右の一番奥に1本ずつはえてくる歯が親知らずです。矯正治療を行う場合、親知らずの対応を検討し、治療方針の説明時にお話させていただいています。

患者さんによって親知らずの対応はそれぞれです。親知らずが4本全てはえてくる方もいれば、歯肉や骨に埋まったままの方もいます。元々親知らずがない方もいます。対応としては、抜歯をすることもあれば保存しておくこともあります。抜歯をする場合も、矯正治療前におすすめするケースと、矯正治療後におすすめするケースがあります。

*矯正治療前に親知らずの抜歯をおすすめするケース*

  • 痛みや腫れがある、またはそれを繰り返している 

親知らず周囲に細菌が繁殖したために周りの歯肉が腫れて痛みが出ることがあります。

智歯周囲炎ともいい、体調を崩したときや免疫が下がっているときにその痛みや腫れを繰り返すことがあります。

炎症が周囲の軟組織や顎の方まで広がってしまうと顔の腫れや排膿を生じることがあります。開口障害を起こすこともあります。

  • 虫歯になっている、またはそのリスクが高い 

親知らずは一番奥にはえてくるためとても磨きづらく、斜めになった親知らずの隙間から汚れが入り込んでしまうと虫歯になりやすくなります。お口の中は1つなので1箇所虫歯になると、お口全体に菌が回ってしまいます。

親知らずが原因で虫歯になっているならば抜いた方が良いでしょう。

  • 噛み合わせが悪い

親知らずが不適切な方向にはえていると頬を噛んでしまったり、不適切な噛み合わせになってしまいます。

顎へ負担がかかり顎関節症に繋がることもあります。

  • 歯を動かす際に障害となる場合

矯正治療で歯を並べたり、奥歯を奥に動かす際に親知らずが障害になることがあります。

その場合は親知らずの抜歯をお願いしています。

*矯正治療後に親知らずの抜歯をおすすめするケース*

  • 先に歯の矯正を行うことで親知らずが抜きやすくなる場合

親知らずが抜歯しにくい位置にある場合は先に矯正治療で他の歯を動かして、親知らずが抜きやすい状態になってから抜歯をおすすめすることがあります。

  • 親知らずが形成途中の場合

年齢が若く形成途中の親知らずは骨の奥に埋まっていたり、歯質が軟らかく抜歯しにくいため、矯正治療を進めながら抜歯時期を相談します。おおよそ16歳ころから抜歯を検討し始めます。

~親知らずを残しておく~

どこか別の歯を失ってしまった際に親知らずを移植することが出来るかもしれません。

親知らずを1度抜いて失ってしまった歯の部位に再植して再び骨や歯肉に定着させることで、他の歯と同じように機能させることができます。この処置は親知らずの大きさや根の形状、歯周組織の状態によっては適応できないこともあります。また、親知らずの神経を取る処置・被せ物の治療等が必要になります。

~親知らずを上手く利用した矯正治療~

・親知らずの手前の歯が虫歯などで状態が悪い場合

・奥歯を奥に動かす治療方針の場合

親知らずの手前の歯を抜歯して親知らずを矯正治療にて並べます。

私は高校生の時に矯正治療を行ないました。治療を始めた時は左上の親知らずは骨の深い位置に埋まっていたため様子を見ながら矯正治療で歯並びを整えていきましたが、やはり左上の親知らずのはえてくるスペースがありませんでした。親知らずが押してくることによる歯並びの乱れを防ぐために手前の大臼歯をわざと抜いて、その抜いた歯の部位に自然に親知らずが下りてくるのを待つという治療方針となりました。

親知らずには矯正装置をつけていませんが計画通りの位置にしっかりとはえてきました。そして矯正治療終了から10年以上経った今も問題なく過ごせています。

健康な大臼歯を抜くことは不安ではありましたが、顎の幅と歯の大きさを考慮し、このように親知らずを上手く利用した矯正治療を経験することが出来ました。

⚠下顎の親知らずが下顎神経に近接している場合はCTを撮影して精査し、大学病院などの口腔外科で抜歯をおすすめすることがあります。稀ですが、抜歯の際に神経を損傷してしまうと下唇や下顎に麻痺を起こしてしまうことがあります。

矯正治療における親知らずの対応は状況に応じてそれぞれ変わってきますので、是非歯科医師と相談して納得いく方法を選択してください!

歯科衛生士 M.M.

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