矯正用のインプラントを皆さんはご存知ですか?
いわゆるインプラントは、歯を失ってしまったところに金属製の人工歯根を植え、そこに被せ物をするというものです。目的は失ってしまった歯の回復になります。
それでは矯正治療中に使用するインプラントはどのようなものなのでしょう?
矯正用インプラントとは?
矯正用のインプラントはアンカースクリュー、インプラントアンカー、TADなど様々な名称があります。
長さが約7~10ミリの医療用チタン合金の小さなネジで、顎の骨に植え込み、それを固定源として歯を動かすことができます。
治療に必要な期間だけ使用するものなので、必要がなくなったら抜きます。治療方針立案の際に歯を動かす量を計算し、動かしかたに応じて使用を検討しますので、すべての方に使用するものではありません。
使用することで患者さんの負担が軽減する場合、使用しないと計画どおりの歯の動きが困難な場合などに使用することになります。
*使用目的*
①不正咬合を効率的に改善可能
歯を移動させる際、目的の歯だけ動かすということは非常に難しく、他の歯も反作用で動いてしまいます。
アンカースクリューを用いることで動かしたくない歯を固定でき、動かしたい歯を効率よく動かすことができます。
抜歯したスペースを有効に活用したい場合、出っ歯さんで前歯をしっかりと後ろに下げたい場合などに欠かせないものとなっています。
②患者さんの負担の軽減
従来の固定装置はヘッドギアなどの患者さんの協力が不可欠、違和感が大きい、目立つなど患者さんの負担が大きい装置を使用してきました。アンカースクリューが従来の装置の替わりとなり、ストレスを軽減し矯正治療が進められるようになりました。
ただし、成長期のお子さんの場合、アンカースクリューが安定しないことがあり、ヘットギア等を使用することがあります。
③難しい歯の動きを可能にする
従来の矯正器具では、歯を動かす範囲と方向に限界がありましたが、アンカースクリューを使用することで難しかった歯の動きが可能になりました。
※ただし、使用したから治療期間が短くなる、非抜歯で治療できるという訳ではありませんのでご注意ください!
*痛み、違和感について*
アンカースクリューの埋入の際は麻酔の注射を行って処置をします。ほとんどの場合、痛みや腫れはありません。歯茎に小さな傷はできますので、埋入後2~3日は違和感を生じることがあります。
歯の移動のためにゴムをかける際は歯茎を少し押す場合がありますので、若干傷みがあるかもしれませんが、それ以外は基本的に痛みはありませんのでご安心下さい。
装置が装着されると、口の中で邪魔な感じがしたり、場合によっては口内炎ができてしまうこともありますが必ず慣れますのでご安心下さい。
*注意事項*
以下のようなことをするとアンカースクリュー脱落の原因となりますので注意する必要があります。
- 不十分な歯磨きによる歯肉炎
- アンカースクリューに強い力がかかる(歯ブラシを強く当てる、いじる、頬杖、横向き寝など)
- 喫煙
10%前後の確率でアンカースクリューが骨としっかりとくっつかないことがあります。そのような場合は部位を変えて再装着を行ったり、治療方針を変更し従来の矯正治療の方法で対応することになります。
矯正治療用のインプラントと聞くと怖く感じるかもしれません。ですが、患者さんの負担を軽減し、効率よく治療をすすめることができますので患者さんにも術者にもメリットの多い装置となります。
歯科衛生士 M.N.