矯正豆知識

矯正治療における抜歯の目的

永久歯列の本格矯正治療では”非抜歯”で行うもの”抜歯”をして行うものがあります。

抜歯をして行う矯正治療について、できれば健康な歯を抜きたくないし本当に抜歯をしなければいけないのかと疑問に思う方も多いと思います。

矯正治療ではなるべく自分の健康な歯は残して治療を進められるよう考えますが、それができないケースがあります。矯正治療を始める前に精密検査をしてしっかりと分析を行った上で抜歯の部位や本数、非抜歯の可否を決定していきます。

今回はなぜ矯正治療で抜歯を行うのか説明していきます。

抜歯を行う目的は・歯を並べるためのスペースを確保すること

        ・上顎と下顎の前後的なバランスを整えること

        ・口元の機能的審美的な改善を目指すこと       です!

*矯正治療で抜歯を行う基準となるもの*

・歯と顎の大きさのバランス

例えばこの写真では歯列に比対して歯が大きいため永久歯が生えるスペースが足りず、八重歯になっています。

叢生量(ガタガタの量)も多いためこの患者さんの場合は左右の永久歯を1本ずつ抜歯して歯を並べるためのスペースを確保することになります。

・上顎と下顎の偏位

出っ歯や受け口など、上顎と下顎のずれがあると前歯の噛み合わせに影響が出てきます。

出っ歯や受け口の方のかみ合わせを見ると、上顎と下顎の前後的なずれがあります。そのため前歯で上手く噛み切れなかったり、滑舌が悪くなったりします。

出っ歯の方の場合は上顎の歯を抜歯し、上顎の前歯を後ろに下げます。

受け口の方の場合は下顎の歯を抜歯し、下顎の前歯を後ろに下げます。

このように、上顎の歯並びと下顎の歯並びの前後的バランスを整えるために抜歯を行う必要がでてきます。

・口元の突出の程度

口元が前に突出している場合はお口が閉じにくくなります(口唇閉鎖不全:口ぼこ)。口唇閉鎖不全は外側に傾斜した前歯が原因になっていることが多く、治すためには前歯を後ろに下げる必要があります。

また、美しい横顔の基準としてE-line(エステティックライン)と呼ばれているものがあり、これはアメリカの矯正歯科医のDr.リケッツが提唱したもので、機能的審美的な口元の一つの指標になります。

口元を下げ、口唇閉鎖不全を解消し機能的審美的な横顔に近づけるために抜歯を行い、上下の前歯を後ろに下げてあげる必要があります。

~非抜歯で矯正治療をするとどうなるの?~

もし無理に非抜歯で矯正治療を行うと、、、

・骨から歯が飛び出てしまう

・口元が更に前に突出した印象になる

・歯肉退縮(歯茎が下がる)の原因になる

・後戻りの原因になる

非抜歯での矯正治療をすると必ず起こるということではありません。もちろん可能であれば非抜歯で矯正治療を行う場合もありますが、適応症例を見極める必要があります。

*抜歯以外の方法で歯を並べるためのスペース確保として行うこと*

・奥歯を奥に移動させる

奥歯を更に奥に移動させてスペースを作ります。(基本的に親知らずの抜歯を行います)

・歯列の形態を整える

乳歯から永久歯への生え変わりの時期にある程度歯列の拡大を行ない、形態を整えておくと後の本格矯正で非抜歯での矯正治療が可能になることがあります。成人の場合は成長期を過ぎて歯槽骨も硬くなっているため歯列の形態を大きく変えることは難しくなります。

歯列の幅を広げると顔も大きくなるの?と思われる方も多いと思いますが、歯の生えている歯槽骨を広げるため顔の大きさには影響しません。

・歯を少し削る(IPR・スライシング・ディスキング)

エナメル質の厚さ1.5mmのうち、側面の0.25~0.5mmを削ります。

エナメル質には神経がないため痛みの心配はなく、歯へのダメージもありません。

スペースの確保だけでなく、歯の大きさのバランスを整える目的でも行うことがあります。

このように抜歯以外にも歯を並べるためのスペース確保をする方法はありますが、抜歯よりも確保できるスペースが少なくなります。


抜歯にもメリットがあり、抜歯をお願いすることには理由があります。

是非、矯正治療を始める前に矯正歯科医と相談して色々な選択肢の中からご自身の納得する治療方法を選択して下さい!

歯科衛生士 M.M.

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